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2008年第3号 |
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何がM&Aを成功に導くのか?
KPMGのトランザクション・サービス部門は昨今のM&Aを取り巻く状況をかんがみて、どのようなM&A取引の要素が、M&A取引の成功率(株価上昇率によって測定)を上げているかを分析するため、シカゴ大学ビジネススクールのスティーブン・キャプラン教授と共同調査を行いました。M&A取引の資金源と成功率の関係等は過去に調査されていますが、M&A取引の目的とその成功率の関係等、まだまだ十分に分析されていないこともあります。本調査では、取引通貨(株式か現金)、買手企業の規模、買収対象企業と買手企業のP/Eレシオ(株価収益率)、買手企業のM&A取引件数、M&A取引の目的、地域性等の要素を調査しました。 本調査では、2000年1月1日から2004年12月31日の間に世界中で公表されたM&A取引のうち、ターゲットの売上が買手企業の売上の20パーセント以上、かつ買収価格1億ドル以上の510件のM&A取引を分析しました。 M&Aは企業価値を高めている 近年、M&Aが企業価値を創造しないとの報道が見られますが、本調査を含め、最近の調査からは、M&Aに肯定的な結果が得られています。本調査の結果によると、M&Aから1年後の企業の平均株価上昇率(正常化後)は3.7パーセント、2年後で10.8パーセントになっています。(本調査の株価は業界ベースで正常化されたものです。) ![]() 関連性の強いM&A取引要素 調査対象となったM&A取引要素のいくつかは取引の成功と特に強い関連性が見られました。例えば買収対価については、予想通り、買収対価が現金による場合は株式交換に比べ、1年後、2年後ともに格段高い成功率(買手の株価上昇率)を収めています。現金買収の場合は1年後で平均15.1パーセント、2年後では平均27.5パーセントとの著しい上昇率を達成しています。それに比べ、買収対価が株式交換のみによる取引は1年後に平均2.1パーセント下がり、2年後に平均プラス3.6パーセント回復するにとどまっています。この理由は、株式を買収対価にしている企業は株式を現金より「安い」通貨と見ており、自社株がすでに最高値に達していると考えている可能性があげられます。特にP/Eレシオやその他の企業価値算定の指標が平均より高い場合にはこの傾向が見られます。更に、現金買収の多くが借入による資金調達を伴うため、現金買収はレバレッジ効果を受けている可能性があります。 買収対象企業または買手企業のP/Eレシオの低さも、M&A取引の成功との強い関連性が見られました。買収対象企業のP/Eレシオの高い順番にサンプル取引を4つのグループに分けて検証した場合、P/Eレシオが最も低い4番目のグループは、買手株価が1年後に平均14.8パーセント、2年後に平均34.4パーセント上昇しています。また、P/Eレシオが2番目に3番目に低いグループは、買手株価上昇率は1年後が平均14.5パーセント、2年後が平均24.9パーセントになっています。反対に、買収対象企業のP/Eレシオが最も高い1番目のグループは、株価が1年後に平均4.2パーセント下がり、2年後に平均でプラス5.5パーセントまで回復しています。 ![]() 買手企業のP/Eレシオの低さも株価上昇と関係しています。上記と同様に、買手企業のP/Eレシオの高い順番にサンプル取引を4つのグループに分けて検証した場合、買手企業のP/Eレシオが最も低い4番目のグループは、M&A取引発表後1年の株価は平均21.6パーセント、2年後には平均42.2パーセント上昇しています。買手企業のP/Eレシオが次に低い3番目のグループの場合は、1年で平均9.9パーセント、2年で平均17.0パーセントの株価上昇が見られました。反対に、買手企業のP/Eレシオが最も高い一番目のグループでは、買手企業の株価はM&A取引の1年後に平均1.7パーセント落ちており、2年後には0.8パーセントに持ち直しています。 ![]() このような調査結果にはいくつかの理由が考えられます。まず、P/Eレシオが低い買収対象企業は、より適正な価格で買収される可能性が高いことが考えられます。次に、P/Eレシオは多くの場合将来のキャッシュフロー予測を反映しているため、買手企業は、P/Eレシオが低い買収対象企業のより現実的なキャッシュフローを買っているといえます。P/Eレシオが低い買手企業の場合は、株価が過大評価されていないため、P/Eレシオが高い企業に比べるとリスクの高いM&A取引に手を出す確率は低いでしょう。さらには、P/Eレシオが高く、株価が過大評価されている可能性の高い企業にとっては、M&A取引後に価値を拡大させることが本質的に難しく、株価はいずれ業界の平均値に戻ると考えられます。 本調査では、M&A取引目的と株価上昇の強い関連性を示す結果がでました。M&Aを行う根拠及び要因とM&Aの成功率の関連性を検証するため、本調査ではプレスリリース、公表された財務諸表や証券取引所への提出書類等の資料を調べました。買収後1年の株価を見ると、「財務強化」をM&Aの目的にあげている企業の株価は平均6.7パーセント上昇しており、「流通チャンネルの改善」を挙げている企業の株価は5.7パーセント上昇、そして「収益の拡大」を目的としている企業の株価は5.4パーセント上昇しています。 2年後の結果も若干似た傾向が見受けられます。「流通チャネルの改善」を目的に挙げている企業の株価の上昇率がもっとも高く、17.8パーセントに達しています。「財務強化」を目的としている企業の株価は平均16.8パーセント上昇し、「コスト削減」を目的としている企業の株価は平均16.5パーセント伸びています。 他にもM&A取引の成功との関連性がある要素がいくつかあります。まず、時価総額が平均以下の買手企業は、時価総額が平均以上の買手企業より株価が高く上昇しています。(本調査での買い手の平均時価総額は70億ドルです。)また、前年1〜2件のみの買収を行った買手企業の株価は10件以上の買収を行った買手企業の株価より大幅に伸びています。 本調査はさらに、他の要素が統計的に有意ではないとの結果をだしています。クロスボーダーM&Aは一国内のものより一般的に困難だと考えられていますが、買手企業と買収対象企業が同一国内に所在するかどうかはM&A取引の成功(1年後・2年後の買手企業の株価)と統計的に有意な相関関係にありませんでした。また、買手・買収対象企業のEBITDA収益率についても、同様に、M&Aの成功と関連性は見られませんでした。 結び もっとも成功率の高いM&A取引には、一定の要素が含まれてるようです。特に現金での買収および低いP/EレシオがM&A取引の成功と強い関連性があります。これらの要素は通常、買収価格が過大ではなく、買収の財務上の目的が現実的であることを示しています。同様に、比較的達成が容易な目的、すなわち財務強化、流通改善、コスト削減を目的としているM&A取引も株主に高い利益をもたらしています。KPMGはこれらの分析がM&Aに関わる方々の間の議論を活性化し、買手・ターゲット双方がより成功するM&Aを達成するお役に立つことを願っています。 本調査レポート、『The Determinants of M&A Success(M&A成功の決定要因)』(英文のみ)はwww.us.kpmg.comに掲載されています。 本稿はKPMG LLPのトランザクション・サービス・グループ発行の『M&A Spotlight』 2007年10月号より翻訳・転載したものです。『M&A Spotlight』は毎号、特定の産業、または一般的なM&A関連のトレンドや課題を取り上げています。『M&A Spotlight』 (英文のみ)の送付をご希望の方は、us-maspotlight@kpmg.comまでお申し込みください。 また、KPMG LLPのジャパニーズ・プラクティスによるM&A関連サービスに関するお問い合わせは江口良(212-872-6971; reguchi@kpmg.com)または小島秀晴(212-954-6125; hideharukojima@kpmg.com)までご連絡ください。 © 2008 KPMG LLP, a U.S. limited liability partnership and a member firm of the KPMG network The KPMG logo and name are trademarks of KPMG International. KPMG International is a Swiss cooperative that serves as a coordinating entity for a network of independent member firms. KPMG International provides no audit or other client services. Such services are provided solely by member firms in their respective geographic areas. KPMG International and its member firms are legally distinct and separate entities. They are not and nothing contained herein shall be construed to place these entities in the relationship of parents, subsidiaries, agents, partners, or joint venturers. No member firm has any authority (actual, apparent, implied or otherwise) to obligate or bind KPMG International or any member firm in any manner whatsoever. The information contained in Jnet is of a general nature and is not intended to address the circumstances of any particular individual or entity. Although we endeavor to provide accurate and timely information, there can be no guarantee that such information is accurate as of the date it is received or that it will continue to be accurate in the future. No one should act on such information without appropriate professional advice after a thorough examination of the particular situation. Direct comments, including requests to begin or terminate subscriptions, to us-kpmg-jp@kpmg.com |